Hiroshi Watanabeさんのトラックメイクを分かる範囲で調べる

皆大好き(?)Watanabeさんトピックスです。対して他の方を知っているわけでもないのですが、世界でもトップクラスに美しいシンセを作り出せるアーティストだと勝手に思っています。

YOUTUBEにとても面白い動画がありましたので、詳細を書きだしてテキスト化してみました。分からない部分も多いですし、Watanabeさんが自身のトラックでこのようなセット・および方法を使っているのかも分かりませんが、Liveユーザーであれば参考になる動画になっているのではないかと思います。


HIROSHI WATANABEさんのトラックメイクを知ろう!




上動画の情報を可能な限り抜き出していきます。手っ取り早くトラックメイクのHowto的なものが知りたい方は一番下に行かれて下さい。まぁ動画を見た方が早いですけどね・・。


トラックの内容を書き出してまとめてみる

「リターントラック」

A. リバーブ エフェクトラック「Abstract Crystal reverb」
B. ディレイ「PPD」、設定は3/16・低音をフィルターでカット・センドは限界値
C. リバーブ、絞りきれませんでした

Abstract Crystal reverbはLive8で使われているエフェクトラックですね。Live9からでも使用可能です(8のライブラリーに入っています)。初めて存在を知りましたが、ややノイジーな残響感を作ってくれる美しいエフェクトラックです。


「使用トラックとアサインエフェクト」

()内の番号がトラック番号です。動画内では全部で7個のトラックが使われています。

(1) ベース bass-8ball dribble bass
(2) リフ プリセットオーディオファイル、エフェクトにPPDとLooper
(3) ドラムラック(おそらく909ベース)
(4) エレクトリックピアノ Polysynth-Tonally Challenged、エフェクトにLooper
(5) パッド(ボイス系) 、エフェクトに何かしらのラック
(6) ドラムオーディオファイル、エフェクトに3EQ
(7) ピアノ、クリップが無いので不明です、下書きとして使われていたのでしょうか・・


「マスタートラックのエフェクト」

マスターにvinntage mastering 1というオーディオエフェクトラックが使われています、これもLive8のものですね。ラックを展開し、内部のマルチバンドダイナミクスがビュー表示されていました。



実際のトラック展開について書き出してみる



動画内で行われている展開をテキストでざっくりと書き出したものです。()内はシーン番号を示しています。例えば、(2-1)はシーン2の開始時点の状態です。Tはトラックの省略です。

(1)1Tベースのみでスタート
(2-1)3Tキックと6Tドラムを重ねる、アクセントとしてリターンAを部分的に入れる
(2-2)パフォーマンス。他トラックのリターンAを切ってから2Tリフのボリュームを上げる(2Tリフは事前にミュート)
(2-3)パフォーマンス。2TリフのリターンBを上げたり下げたりする、3Tキックをミュートしたりする
(3-1)4Tエレピを重ねる、これもミュートからスタート、リターンを使いながらボリュームを上げる
(3-2)パフォーマンス。リターンを使いストーリーを作る、たまに1Tベースと2Tリフをミュート
(4-1)パターンが大きく変化。2TリフのOFF、5TパッドをON、3Tドラムパターンを変える、4Tエレピのオクターブを1つ下げる(※正確にはこれがデフォルトで今までが+1されていたと思われる)
(4-2)パフォーマンス。3Tドラム→1Tベースの順でミュートし次のシーンへ
(5-1)切っていた2Tリフを再度ON、3Tドラムにハットが追加
(5-2)パフオーマンス。4TエレピのlooperをON、録音後リバース再生
(5-3)パフォーマンス。3TドラムをOFF、4TエレピをON⇔OFF+さらにリターンAで変化を付ける
(5-4)パフオーマンス。4Tエレピのlooperを多重に重ねて行く
(5-5)パフオーマンス。1T~3Tまでをミュート+looper逆再生で変化を付ける、4Tのボリュームを下げながら次へ
(6-1)1Tベースと6TドラムをOFF、2Tリフのパターンが若干変わる、3Tドラムのレングスを短く
(6-2)パフオーマンス。3Tドラムをミュートし、下げておいた4Tエレピをボリュームをじわじわ上げる
(6-3)パフォーマンス、4Tエレピのlooperの長さをどんどん短くする
(6-4)パフォーマンス、短くした4Tエレピlooperを逆再生しながらフェードアウト+リターンBのPPDをMAX

テキストだけ眺めていても訳が分からないのですが、事前にトラックを耳に入れておくと具体的に行われているトラックメイクが見えてきます。




動画の中で行われているトラックメイクパフォーマンス

ここからが本題(?)になります。上情報を全て統合し、トラックメイクパフォーマンスの方法として部分的に抜き出したものです。重ねて書きますが、HIROSHI WATANABEさんのトラックに見られる傾向・・といったものではありません。あくまでもこの動画内から拾う事の出来るものです。

「エフェクトの使い方・エフェクトを使ったパフォーマンス」





(1)エフェクトを使用して明瞭な音と不明瞭な音を区別する

(2-2)の部分ですね。聴かせるべき音を展開する場合は不用意なエフェクトを切っています。氏のトラックは連続的なシークエンスが特徴だと思うのですが、全てを連続させるのではなく、強調する部分はしっかりと強調しされた芯のあるパターンになっている様な気がします。


(2)ミュートしたフレーズを上げる場合にリターントラックを挟む

メロディが強調されるようなフレーズは低いボリュームからスタートしています。(2-2)や(3-1)の部分です。注目するのは、単純にボニュームを上げるだけでなく、リターントラックを小刻みに挟みながら上げて行く所でしょう。他のトラックでも使用したリターントラックを使う事で、よりスムーズな連続性が生まれているように思います。


(3)Liveエフェクトを多用したパーフォーマンス

動画内ではLoopeの印象が強いですが、リターントラックが小刻みに使われていることも非常に重要です。フレーズを変化させるよりも素直にエフェクトを使用した方が良い・・・のかもしれません。そのためにはエフェクトをしっかりと押さえておかなければいけませんね。


(4)リターントラックを使用するトラックを区別する

全てのトラックにリターンが設定されている訳ではないようです。リターンはA.B.Cと三種類ありますが、動かすものと動かさないものが区別されています。きちんと音色とエフェクトの関係やイメージが分かっていないとこうはいきません。


(5)リバーブを二重にかける

リターンはA.Cは共にリバーブです。


「MIDIコントローラーを使ったパフォーマンス」




MIDIコントローラーを使用した(場合において可能な)パフォーマンスの方法です。Liveだけでなく、トラックメイク全般に汎用的に使用可能なTIPSです。


(1)リフを固定しない

曲の中心的なメロディとなるリフですが、部分的にミュートされています。何の疑問も抱かずに鳴らしとくものだと思っていたので非常にためになりました。

リフは下手に抜くとパターンに重さがなくなってしまいますし、違和感がすごかったりします。氏は抜き方が非常に上手く、厚みを維持しならがらも違和感の無い変化が両立されています。この辺りに音源の選び方のヒントがありそうですね。


(2)音を抜く順番を考える①

次のパターンに移行する場合は『キックを抜く』というのが定番ですが、動画内では『キックを抜く場合』と『ベースを抜く場合』が展開されています。また、単体を抜くのではなく、連続して抜くことでバリエーションが付けられています。

分類すれば次のような感じですね。

・キックを抜く→次のパターンへ
・キックを抜く→ベースを抜く→次のパターンへ
・ベースを抜く→次のパターンへ
・ベースを抜く→キックを抜く→次のパターンへ


(3)音を抜く順番を考える②

(2)と平行していますが、何小節目に音を抜くのかということも考慮されています。具体的に言えば『4小節目を抜くのか』『3小節目を抜くのか』といった違いが動画内で行われています。

記号で示せば以下の様な感じでしょうか。

・4小節目を抜く場合 ○○○○|○○○○|○○○○|××××||△△△...
・3小節目を抜く場合 ○○○○|○○○○|××××|○○○○||△△△...

4小節目を抜くのは当然のセオリーですが、それだけでなく3小節目を抜く場合も混ぜる事でパターンにアクセントが生まれています。ダイナミクスが欲しい場合は4小節ですが、シークエンスを求める場合は3小節といった感じでしょうか。良く考えればどこで抜いてもいいんですよね・・・。今回の動画で一番ためになった部分かもしれません。

(2)と組み合わせればトラックのON/OFFだけでも幅広いパターンの変化が作れますね。
 

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