Roland TR-8Sの使い方⑤ 打ち込みについてのアレコレ

いよいよ実際の打ち込みに入ってきます。下準備として念のために空のスロットと使用したいキットを呼び出しておいてから進んでください。

今回はステップ入力を中心にやっていきます。かなり長い内容なので疲れるかもしれませんね。


TR-8Sは実質的に4種類(3種類)の状態しかない

打ち込みに入る前にちょっとした前提知識についておさえておきましょう。

TR-8Sを起動している間の「状態」は原則的には以下の4種類しかありません。

①パターンやバンクを呼び出す状態
②ステップ入力の状態
③リアルタイム入力の状態
④リアルタイムパフォーマンスの状態

①についてはやや例外的なものですので実質的には②~④の3種類です。『TR-8Sの電源を入れている間はこの3種類のうちのどれかの状態になっている』といえます。

いちいち覚えるようなことではありませんが、機材のイメージがつかめない場合は雰囲気としてざっくりと頭にいれておくと今後がスムーズになります。

2種類の打ち込み方法

では打ち込みに入っていきましょう。TR-8Sでは以下の2種類の方法があります。

・TR-REC(ステップ入力)
・INST REC(リアルタイム入力)

仕組みとしては難しくはありませんが、一般的な打ち込みに対して+α的な部分がありますのである程度目を通しておいた方が良い部分です。

TR-REC(ステップ入力)について

TR-8Sにおいて「TR-REC」と呼ばれるものがいわゆる「ステップ入力」です。

鍵盤的なものを弾くのではなくボタン(シーケンサー)をポチポチと押してフレーズを作るものですね。おそらくですが 「TR-REC」のTRはトリガーのTRではなのでしょう。打ち込みという作業においてもっともオーソドックスなものだと言えると思います。

TR-8Sをステップ入力モードにする場合は本体左側の中心よりやや上にある「TR-REC」ボタンを押します。


この状態で各トラック(BDやSDといったもの)を選択すれば本体最下部にあるシーケンサーが有効になります。

<ステップ入力モードにする>
[TR-REC]ボタンを押す(※ONになれば赤く光ります)

また、ステップ入力モードにすると「TR-REC」ボタンだけでなくバリエーション(※A~Hの部分)も赤くなりますが、これは『TR-8Sが録音待機状態であること』を示しています。

『なんでそんな当たり前のことを?』と思われた方も多いと思いますがこれには一応理由があります。なぜかといえば、TR-8Sではこの状態になっていればステップ入力モードであってもパッド(※テンポダイアルの右下にあるもの)を叩くことで音が録音できる(打ち込みができる)からです。

なんでしょうね…あまりステップ入力モードだとか気にしても仕方がないみたいな感じでしょうか。

ここから先の操作はすべてステップ入力モードになっているということが前提です。

一応として書いておきますと、例えばバスドラムを打ち込む場合は「BD」を押せばトラックが選択されて下の16パッドにシーケンスの状態が表示されます。あとはテキトウにポチポチとシーケンサーを押していけば感覚として理解できると思います。

・サブステップとフラムについて

TR-8Sでは「サブステップ」と「フラム」を打ち込むことが可能になっています。これらはドラムの打ち込みにおいてとても重要なものですし、役割として近いものがあるので同時進行で覚えていった方が効率的です。

ではまずサブステップについて解説していきましょう。結論から書きますと、サブステップとは「1つのステップの中で複数回音を鳴らすこと」を言います。

<専門用語>
サブステップとは、1つのステップの中で複数回音を鳴らすこと

TR-8Sに限ったことではありませんが大抵のドラムマシンのステップ数は16となっていますので、原則的には同じ音は1回のループ中に最大で16回しか発音できません。しかしながら、例えばサブステップを「1/2」…つまり『音の長さを半分にする』という設定にすれば1回のループ中に最大で16×2=32回の音を出すことが出来るわけです。

TR-8Sのサブステップ設定は「1/2」「1/3」「1/4」の3種類が用意されています。これらを利用するとフレーズに対して有機的なアクセントを加えることが出来るので表現の幅がぐぐっと広がります。

次にフラムですが、これは「事前に同じ音を軽く鳴らすこと」を言います。

<専門用語>
フラムとは、事前に同じ音を軽く鳴らすこと

つまるところ、機能としては『1/2のサブステップ』と似たようなものです(きちんとドラムを履修されている方には怒られてしまいそうな感じもしますけれど)。

とはいえ、これらは全く同じではありません。サブステップは同じ強さの音が連続するのに対して、フラムは「弱い音→強い音」という音量の変化があるのでより自然な感じになります。

バスドラムを例としてあげると、通常であれば『ドン』と鳴るものがフラムにすると『(ド)ドン』という音になります。

・サブステップの打ち込みと設定方法

サブステップの打ち込み方法と設定はそれぞれ以下のようになります。

<サブステップの打ち込み>
「SUB」ボタンを押してサブステップモードにする、後は普通にシーケンサーを打ち込めばOK(※SUBボタンを押しながらでも可能)、サブステップで打ち込んだシーケンサーは黄色になる

<サブステップの設定>
「SUB」ボタンを押しながら「VALUE」ダイヤル回して「1/2、1/3、1/4」から選択する

[SUB]ボタンの場所は以下になります。


サブステップのパラメーターは打ち込んだ後で長さを変えることは出来ません。例としてあげれば『1/2サブステップで打ち込んだシーケンサーを選択して1/4サブステップに一括変更するようなことは出来ない』ということですね。

打ち込んだサブステップのパラメーターを変更する場合は、そのシーケンサーを一度消してからサブステップの長さを変えて再度打ち込むしかありません。

既に書いていますがサブステップで打ち込んだシーケンサーは黄色になるので分かりやすいですね。ただ、「1/2、1/3、1/4」の違いで色合いが濃くなったり薄くなったりするようなことはありません。 

・フラムの打ち込み方法

フラムの打ち込み方法は以下になります。

<フラムの打ち込み>
「SHIFT」ボタンを押しながら「SUB」ボタンを押すとフラムモードになる、後は普通にシーケンサーを打ち込めばOK、フラムで打ち込んだシーケンサーは薄い紫色(ラベンダー)になる

フラムについては特に設定することがありません。

・オルタネート(オルタネイト)の打ち込み

オルタネートというのは、とても簡単に言えば「別の音」のことです…と言ってもこれだけでは何の説明にもなりませんが…。

イメージとしては実際にドラムを叩く場合の間隔でしょうか。バスドラムにしろタムにしろ中心を叩く場合と側面を叩く場合で違う音が出ますが、このような感じで同じトラックでも『中心を叩く音』と『側面を叩く音』を発音させることができます。

ただ、オルタネート音はあらかじめ設定されている必要があるので全てのトラックで利用できるわけではありません

オルタネート音の打ち込み方法は以下となります。

<オルタネート音の打ち込み>
オルタネート音を設定したいトラックのインストボタンを押しながら、シーケンサーを押す

オルタネートで打ち込んだシーケンスは薄いピンク色に変わります。オルタネートが設定されていないトラックの場合は普通の打ち込みと同様の扱いとなります。

・打ち込んだシーケンスを消去する

そろそろ打ち込んだシーケンスが溜まってきたころでしょう…というわけで、打ち込んだシーケンス等をリセットする方法について書いていきます。

シーケンスの基本的な消去方法については以下の3種類となります。

<トラックのシーケンスを消去する場合>
シーケンスを削除したいトラックのボタンを押しながら[CLEAR]ボタンを押す(※この場合は選択したバリエーション内のシーケンスのみが消える)

<バリエーションを削除する場合>
[CLEAR]ボタンを押しながら削除したいバリエーションを選択する

<パターン全体を削除する場合>
① [PTN SELECT]を押してパターン選択状態にする
② [CLEAR]ボタンを押しながら削除したいパターンを選択する

ちなみにバンクを丸ごと削除する方法はありません。

また、シーケンスをリアルタイム的に削除する方法もあり、この方法を使うとパターンの再生位置に連動してシーケンスを消していくことが出来ます。

この場合の方法は以下となります。

<パターンの再生位置に連動してシーケンスを消す場合>
パターン再生中に[CLEAR]ボタンを押しっぱなしする

言葉の説明としてはちょっと意味が分からないかもしれませんが、実際にやってると感覚として理解できると思います。

・音の強さを変えてシーケンスを打ち込む

今回の内容としては最後になります。

TR-8Sで音を弱く打ち込む場合は以下の操作をします。

<弱い音でシーケンスを打ち込む>
[SHIFT]を押しながらシーケンスを打ち込む

[SHIFT]を押しながら打ち込んだシーケンスの色は通常通り赤色ですが光量がやや薄くなります。この辺りは結構微妙なところなので注意して見ないと分からないかもしれません。

また、やや先行する内容になりますが打ち込みパッドを押しながら「ACCENTノブ」を回すことでベロシティを変更することも可能です。ちなみにデフォルト状態だとベロシティは50となっています。

TR-8Sはこの辺りの設定が甘いので改善してもらいたいところですね…。

再生対象外のバリエーションへ打ち込む場合の操作

今回の内容とは微妙に外れますが気にしない方向で…。

フレーズを作っていく過程やパフォーマンスに関わる要素として「フレーズの再生と作成を同時に行う場合」があります。例をあげれば『バリエーションA~Dまでをループ再生しながら、新しいフレーズをバリエーションEに打ち込んで作る』ような作業ですね。

このような作業がやりたい場合は[TR-REC]を押しながら打ち込みたいバリエーションを選択します。

<再生対象外のバリエーションへ打ち込む>
[TR-REC]を押しながら打ち込みたいバリエーションを選択する

この状態だと指定したバリエーションが濃い目の黄色に点灯します
 

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