Roland TR-8Sの使い方⑭ キットについて

終わりが見えているにもかかわらず作業が進まない14回目です。

今回の内容は「KIT(キット)」の説明です。打ち込みに関して直接関わってくる部分ではありませんが、スムーズなパフォーマンスを目指す場合はどうしても目を通しておく必要がある部分だったりもします。


キットとは何か(改めて)

復習の意味を込めて、これまで散々登場している要素や機能を改めて見ていきます。

TR-8Sの機能構造を大きく分類すると以下の3つになっています。

・パターン
・キット
・ユーティリティ

これらはざっくりと言えば以下のようにまとめることが出来ます。
 
・パターン → MIDIシーケンスデータ
・キット → 音色・エフェクトの設定データ
・ユーティリティ → TR-8S本体の設定データ
 
TR-8Sはこれらが完全に独立していることが特徴と言えます。

 

仮に2つのパターン(パターンAとB)にキット①をアサインさせたとしましょう。この場合において、A用としてキット①のパラメーターを変更した場合は同じキットを共有しているためBに対しても同様の変更が反映されます。

Bに対しても良い変化が起きれば何も問題もないわけですが中々そうはいきません。もしBで上手くいったとしても、アサインさせるパターン数に比例してミスマッチの発生率は上昇します。

そうなると、理想としては『1つのパターンに対して1つのキットがそれぞれアサインされていれば良い』となりますが、このようなことを行うのは大変な労力になってしまうのでこれはこれで現実的ではありません。

TR-8Sには約90個のプリセットキットが保存されているとはいえ、音に関してはそれぞれに好みがあります。この辺りは個人差があると思いますが、ほとんどの場合で最終的に使うことになるプリセットキットはこのうちの1割~2割程度になるはずです。

つまり、TR-8Sでは「キットをいかに管理するのか」ということが重要になってくる(場合が極めて多い)と言えます。

キットの設定で変更できるパラメーター

「キットの設定」と言ってもその内容は非常に膨大です。とりあえずとして設定できる大まかなパラメーターを書きだすと以下となります。

・LEVEL(キット全体の音量)
・REVERBの各設定
・DELAYの各設定
・MASTER FXの各設定
・EXT INの各設定(サイドチェイン、PAN、エフェクトへのSEND量等)
・LFOの各設定
・OUTPUTの各設定(各トラックの出力先を決める)
・MUTEの各設定
・CTRLの各設定
・COLORの各設定
・NAMEの設定

これらがキット設定のパラメーターです。

これまでに紹介した内容に含まれる要素を除くと以下になります。

・LEVEL(キット全体の音量)
・REVERBの各設定
・DELAYの各設定
・MASTER FXの各設定
・EXT INの各設定(サイドチェイン、PAN、エフェクトへのSEND量等)
・LFOの各設定
・OUTPUTの各設定(各トラックの出力先を決める)
・MUTEの各設定
・CTRLの各設定
・COLORの各設定
・NAMEの設定

では残りの要素について補足していきましょう。

・EXT INの設定について

ここではTR-8Sに別の機器を接続した場合の設定を行います。

そのようなわけでTR-8S単独で使ったり、DAWとしか同期しないといった場合は必要のない項目なのですが、念のために設定項目を書き出すと以下になります。

・SideChnSrc → サイドチェインのトリガーを決める
・SideChnType → サイドチェインの種類を決める
・SideChnDpt → サイドチェインの深さを決める
・Gain
・Pan
・ReverbSend
・DelaySend

外部機器…と言うとなんとなく難易度が高い感じなりますが、スマートフォンを接続して無料のシンセアプリを使う場合もこれに該当しますので特にハードルが高いわけではありません。

接続方法については次回以降でやっていきます。

・LFOの設定について

TR-8SはリズムマシンにもかかわらずLFO(Low Frequency Oscillator)が用意されています。音が単調になり過ぎることを防いでくれるありがたい機能です。

LFOの設定は以下となります。

・Waveform → LFOの波形を決める
・Tempo Sync → テンポと同期するかどうか決める
・Rate → LFOの周期を決める

シンセではないためかかなり簡略化されていますが有るのと無いのでは大違いです。

・OUT PUTの設定について

これは各インスト・トラックの出力先を変更することができます。専門的な用語だと「パラアウト」というものですね。

TR-8Sでは出力先を以下から選択できます。

・MIX → MIXOUTから出力
・ASSIGN 1~6 → ASSIGNOUTからモノラル出力
・ASSIGN A~C → ASSIGNOUTからステレオ出力

これだけを見ると選択肢がかなり豊富なように見えますが、ASSIGN 1~6とASSIGN A~Cはそれぞれ端子を共通しているので全てを同時使用することはできません。


例えば、ステレオ出力でASSIGN AとBを使用した場合は『5と6』しか残りません。そのようなわけで、この場合であれば残りのパラアウト出力は『モノラル5と6』か『ステレオC』の2択となります。

・MUTEの設定について

名前の通りトラックをミュートする設定を行います。

察しが付いている方も多いと思いますが、ここで設定するのは「オープンハイハットとクローズハイハットの相互関係」です。

デフォルト設定ではクローズが優先(※同じ位置にシーケンスがある場合はオープンがミュートされる)となっています。大抵の場合でこの状態で問題ないと思いますが、変更したい場合はここから設定を変えましょう。

・COLORの設定について

TR-8Sのパフォーマンスにおいてある意味最も重要なのがこの「COLOR」です。ここで設定した色が各インスト・トラックのボリュームフェーダーに反映されます。


実際のパフォーマンス中に音を確認するような余裕は中々ありません。そのようなわけで、このカラー設定をいかに丁寧に詰めて『トラックがこの色になっているなら音の種類は〇〇系だな』と視覚的な理解をすることが必要になってきます。

ではTR-8Sで設定できるカラーについては以下の12色まで可能です。

・RED
・ORANGE
・YELLOW
・LIME
・GREEN
・SKYBLUE
・LIGHTBLUE
・BLUE
・PURPLE
・MAGENTA
・PINK
・WHITE

12色と豊富に用意されているのは良いことなのですが、似通っている色があることは問題だとも言えます。

ネックになるのはブルー系とピンク系です。見比べて判断することは可能な程度に違いがありますが、単品で見せられると判断することが難しい程度の違いしかありません。

個人的には以下の色については片方しか使わないようにした方がミスが減ると感じます。

・SKYBLUEとLIGHTBLUE
・MAGENTAとPINK

色味の比較で考えれば「SKYBLUE」と「PINK」を残した方が近色との識別がしやすくなりますね。

そのようなわけで、最大でもLIGHTBLUEとMAGENTAを消去した全10色で考えていった方が効率的ですし、よりミスを減らす場合はLIMEも消去して9色設定にした方が正解に近くなります

この9色を改めて書き出すと以下のような構成になります。

・RED
・ORANGE
・YELLOW
・LIME
・GREEN
・SKYBLUE
・LIGHTBLUE
・BLUE
・PURPLE
・MAGENTA
・PINK
・WHITE

カラーの設定を考える場合は『スネアの音はオレンジにする』といった感じで事前にテーブルを組む必要があります。

これについてはそれぞれで考えるしかありません。TR-8Sのプリセットキットのカラー設定を参考にしたいところですが、これはそこまで厳密に設定されているわけではないので参考にするのも難しかったりします。

一応書いておくと、以下の部分は共通していると言えます。

・RED → キック
・ORANGE →スネア・クラップ
・YELLOW → ハット
・LIME / GREEN → タム・シェイカー
・WHITE → ボイス

これ以外は共通していたりいなかったりするので分類がちょっと難しいです。

大雑把に言えば「青系統はシンセである」とは言えます。『カラー設定なんて考える時間が無い』という場合であっても最悪これだけは覚えておきたいところでしょうか。ちなみにBLUEがベース音、PURPLEにウワモノ的な音が使われていることが多いです。


これでキットの設定については終了です。これ以外にもインスト・トラックをグループ化できたりもするのですが、汎用性が下がるだけなので需要としてはほとんど発生しないでしょう。

細かい部分の項目についてはマニュアルを参考にされてください。予めマニュアルを参照して事前情報を入れておいた方がスムーズに作業が進みます。
 

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