Roland TR-8Sの使い方⑩ エフェクトについて

記念すべき…かどうかは分かりませんがついに10回目となりました。

そろそろ書いていく内容が混乱しつつあるタイミングなので、軽いリセットの意味合いを兼ねて今まで一切触れてこなかったエフェクトについてやっていきます。


TR-8Sには3つのエフェクトが存在する

TR-8Sには大きく分類して3種類のエフェクトが存在しています。これはリバーブやコンプレッサーといった「エフェクトそのもの」の種類ではなく、構造上の種類として存在する数です。

…で、この3種類は以下となります。

・MASTER FX
・Reverb/Delay
・INFT FX

これらを使いこもうとすると相当な知識が必要となってきますので、ここでは概要+α程度の範囲で説明をしていきます。

MASTER FXについて

MASTER FX(マスターエフェクト)とはその名の通り絶対的なエフェクトです。何が絶対的なのかと言えば「TR-8Sのトラック全てに対して強制的に作用する」からです。任意のトラックを選んで作用させることは出来ません。

マスターエフェクトについて最低限覚えるべきことは以下の2つです。

①マスターエフェクトは全てのトラックに作用する
②マスターエフェクトはKIT毎に設定されている

①については既に書いているので省略するとして、注意しなければいけないのは②ですね。

TR-8SのマスターエフェクトはKIT毎にそれぞれ設定されています。そのようなわけで、例えば『すべてのパターンに対してローパスフィルターを一括して使う』ということは原則的には出来ません。

このようなことをやろうと思えば全てのKITに対してローパスフィルターを設定するか、全てのKITのマスターエフェクトに対してSWのON/OFFを設定する必要があります。

<関連内容>
・キットの音色を固定するor非固定にする(SW)

SWについては上の記事を確認されてください。ちなみに初期設定では全てのKITにLPF/HPFがアサインされています。

・MASTER FXの種類について

TR-8Sのマスターエフェクトの種類は以下となります。

・HPF:ハイ・パス・フィルター(低域をカットします)
・LPF:ロー・パス・フィルター(高域をカットします)
・LPF/HPF:ロー・パス・フィルター/ハイ・ パス・フィルター(高域または低域をカットします)
・H BOOST:ハイ・ブースト(高域をブーストします)
・L BOOST:ロー・ブースト(低域をブーストします)
・L/H BOOST:ロー・ブースト/ハイ・ブー スト(低域または高域をブーストします)
・ISOLATOR:低域、中域、高域のバランスをとります。
・TRANSIENT:アタックとリリースを強調、または弱めます。
・TRANSIENT2:アタックとリリースでフィルターを動かします。
・COMPRESSOR:大きな入力を圧縮して、最大レベルを揃えます。
・DRIVE:キャラクターを持たない歪み。
・OVERDRIVE:オーバードライブ
・DISTORTION:ディストーション
・FUZZ:ファズ
・CRUSHER:ローファイ効果が得られます。
・PHASER:フェイズ効果が得られます。
・FLANGER:フランジング効果が得られ ます。
・SBF:サイド・バンド・フィルター(特定の周波数成分だけ通すフィルター)。
・NOISE:ノイズを加えます。

マスターエフェクトについてはかなりの確率でLPF/HPFをそのままアサインさせておくのが好都合のような気がしますね…。もしくは片っ端からSWをONにしてしまうのが合理的なのかもしれません。

・MASTER FXのパラメーターを変更する

マスターエフェクトはパラメーターについても変更可能です。これを行う場合の操作は以下となります。

 <マスターエフェクトのパラメーターを変更する>
[CTRL SELECT]ボタンを押しながらMASTER FX[CTRL]つまみを回す

この操作はエフェクトを切り替えるためのものではなく、それぞれのエフェクトに付随しているパラメーターを変更するためのものです。

例えば、LPF/HPFには「Depth」と「Resonance」 が設定されているのですが、この2つを切り替える場合の操作ということになります。こうすることでMASTER FX CTRLノブにアサインされるパラメーターが切り替えることが出来ます(液晶画面に表示されるので視覚的に確認できます)。

それぞれのマスターエフェクトに対して変更できるパラメーターは以下となっています。

・HPF:Cutoff(Depth)、Resonance
・LPF:Cutoff(Depth)、Resonance
・LPF/HPF:Cutoff(Depth)、Resonance
・H BOOST:Boost、Frequency
・L BOOST:Boost、Frequency
・L/H BOOST:Boost、Frequency
・ISOLATOR:Balance、Low、Mid、High
・TRANSIENT:EnvDepth、Attack、Release
・TRANSIENT2:EnvDepth、Attack、Release
・COMPRESSOR:Balance、Attack、Release
・DRIVE:Balance、Drive、Level、HpFreq、PreEqFreq、PreEqL、 PreEqH、PostEqFreq、PostEqL、PostEqH
・OVERDRIVE:Balance、Drive、Tone、Level
・DISTORTION:Balance、Drive、Tone、Level
・FUZZ:Balance、Drive、Tone、Level
・CRUSHER:Balance、SmplRate、Filter
・PHASER:Balance、Rate、Depth、Resonance、Manual
・FLANGER:Balance、Rate、Depth、Resonance、Manual
・SBF:Balance、BandIntrvl、BandWidth
・NOISE:Color、Level 

機能としては豊富ですがその分使い方が難しいのがマスターエフェクトです。

・MASTER FXの変更と保存

マスターエフェクトの切り替えはKITの編集から可能です。既に書いている内容ですが、[SHIFT]を押しながら[KIT]を押すことで編集モードに入れます。

また、マスターエフェクト…に限定した話ではありませんが、KITの内容に対する設定変更は自動で保存されないので手動で行う必要があります。これは以下の操作で可能です。

<KITの変更を保存する>
①「WHITE」を押して保存画面を呼び出す
②「VALUE」ノブで「KIT」を選んで「ENTER」
③「VALUE」ノブで保存対象を選んで「ENTER」

パターンを保存する場合と同じやり方ですね。

ショートカットコマンドは以下となっています。

<KIT保存のショートカットコマンド>
・「WHITE」を押しながら「KIT」を押す

ちなみに、パターンとキットを同時保存する場合のショートカットは『SHIFTを押しながらWRITE』で可能です。

ReverbとDelayについて

TR-8Sには固定エフェクトとしてリバーブとディレイが設定されています。これはマスターエフェクトと違って変更することができません。

リバーブ・ディレイの基本的なパラメーターは独立したノブが存在しているのでこの辺りについては深く考えなくて済む部分ですが、各トラックへの影響については十分に意識しなければいけません。

TR-8SのリバーブとディレイはそれぞれのKIT内にあるそれぞれのトラックでON/OFF(※正確に書けばアサイン量)が設定されています。つまり『トラックに設定されているアサイン量がゼロの場合は、リバーブ/ディレイ側のパラメーターをどれだけ弄ってもエフェクトがかからない』…ということです。

ドラムマシンの仕様としてはごく真っ当ではありますが、スマートなトラックメイクをしようと思えばかなりの事前準備をしておかないといけなくなるので大変といえば大変です。

・Reverb、Delayのアサイン量を変更する

それぞれのトラックにおけるリバーブ・ディレイのON/OFF設定については以下の2つがあります。

<トラックのリバーブ量・ディレイ量を設定する(1)>
①[SHIFT]ボタンを押しながら[INST]ボタンを押すとエディットモードに入る
②リバーブ量・ディレイ量を変更したいトラックを選択する
③[VALUE]ノブを回して[Reverb Send] [Delay Send]を見つけてから[ENTER]ボタンを押す
④[VALUE]ノブを回してアサイン量を変更する

<トラックのリバーブ量・ディレイ量を設定する(2)>
①[CTRL SELECT]ボタンを押す
②[VALUE]ノブを回して[Reverb Send] [Delay Send]を見つける
②それぞれのトラックにある[CTRL]ノブを使ってアサイン量を変更する

書くまでもないと思いますが(2)の方が楽です。

手順としてもそうなのですが、(1)で回すことになる[VALUE]ノブは設定単位が小さいため上限までアサイン量を増やそうとすると何回もノブ回さなければいけなくなるので指が疲れます。

(1)と(2)はやり方は違っても設定しているパラメーターは共通しています。(2)で大雑把な数値を設定して(1)で細かく詰めていくというやり方も可能です。

リバーブとディレイの設定変更もKITに含まれますので保存方法は同様です。

INFT FXについて

最後に登場するのがそれぞれのトラックに対して個別に設定するエフェクトです。TR-8Sではこれを「INST FX」と呼んでいます。

INST FXについて最低限覚えるべきことは以下の2つです。

・各トラックに対してひとつしか設定できない
・アサイン量はパフォーマンス中でも自由に変更できる

INST FXの役割は幅が広いため使い方はそれぞれです。コンプレッサーをかけて「音作りをアシストするために使う」場合もあるでしょうし、フィルターをかけてより精密なパフォーマンスをする場合もあると思います。

・INST FXの種類

INST FXの種類は以下となります。

・THRU INST FX:効果なし
・HPF:ハイ・パス・フィルター(低域をカットする)
・LPF:ロー・パス・フィルター(高域をカットする)
・LPF/HPF:ロー・パス・フィルター/ハイ・パス・フィ ルター(高域または低域をカットする)
・H BOOST:ハイ・ブースト(高域をブーストする)
・L BOOST:ロー・ブースト(低域をブーストする)
・L/H BOOST:ロー・ブースト/ハイ・ブースト(低域または高域をブーストする)
・ISOLATOR:低域、中域、高域のバランスをとる。
・TRANSIENT:アタックとリリースを強調、または弱める。
・COMPRESSOR:大きな入力を圧縮して最大レベルを揃る。
・DRIVE:歪みを作る。
・COMP+DRV:COMPRESSOR をかけた音に DRIVE (モノラル)をかける。
・CRUSHER:ローファイ効果(モノラル)を作る。

基本的な種類としてはマスターエフェクトとそう変わりません。

様々な用途が期待できるINST FXですが、アサイン量の変更は各トラックにある[CTRL]ノブを使うことになるため操作上のバッティングが発生する可能性があります。

[CTRL]ノブは前項目で書いたリバーブ・ディレイのアサイン量やPANの設定でも使う部分となっている(※これについては次回やります)ため何かと出番が多くなります。操作上のミスを減らしたり、より感覚的なトラックメイクを図る場合は予め用途を固定しておく方が合理的かもしれません。
 

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